参政党党員向け勉強会メモ情報
2025年8月29日 「グローバル化」と「国際化」の相違 建設的議論のために
講師:施 光恒(せ てるひさ 九州大学大学院比較社会文化研究院
グローバル化と国際化を分けて考える必要がある
(言葉の定義)
◆グローバル化◆
→国境の垣根をできる限り引き下げ、ルールや制度、文化、慣習などを共通化し、人、モノ、カネ、サービスの流れを活発化させる現象、およびそうすべきだという考え方。地球規模化、地球一体化。共通のルール、言語、文化、慣習を統一。EUのような仕組み、政治運営を行うなどを意味する
◆◆
◆新自由主義◆
経済的思想の用語である。西部部門の縮小や市場競争の導入によって経済社会の効率化や活性化を目指す、一連の理論や運動の総称
英米1980年代初頭から(サッチャー首相、レーガン大統領から)
それまではケインズ主義(福祉国家路線 1945-1970年代)
日本では1990年代半ばごろから本格化(規制緩和、民営化、自由貿易化、緊縮財政、構造改革)
緊縮をすることで、庶民を豊かにせず、搾取して文句を言わない労働者にすることができた
なぜ冷戦後世界(特に米国、英国)はグローバル化を進めたか
理由1、理想主義・・・世界を一つにすると戦争がなくなり平和になる。
理由2、経済的利益・・世界中で稼げる(ヒト、モノ、カネの自由化)
グローバル化が引き起こした問題
・経済的格差の拡大、民主主義の機能不全、国民の分断
・1981年と2012年で比較 上位1%の人たちの所得の占有率→世界中で格差が広がったため分断が起こった
・なぜ格差が広がるのか→資本が世界中に移動できるようになったこと(稼ぎやすいところに資本を動かす)
・稼ぎやすい国に投資家は投資したがる。
・資本投資しやすい国に制度を変える。
・政府が一般庶民を見るより起業家に良い制度に変更する
例:法人税減税で消費税増税をパックにするなど、
例:人件費を下げる政策(外国人労働者、移民を雇用しやすくする政策)
例:非正規雇用を増やす
例:税制改革(法人例引き下げる)
例:労働者の権利を削る(賃金を抑える、非正規、クビにしやすい、外国人を増やす)
例:規制緩和、民営化 景気が悪くても稼ぎやすい分野(医療、食料、エネルギー、教育、鉄道、水道、農協、郵便局)
例:グローバル企業に受ける政策を政治家がとるようになった。普通の人たちの声を聴かなくなってきた。
例:多国籍労働者が増えると労働組合が作りにくいとうい現象(DEI、多様性推進、ダイバーシティ)
例:福祉、公共事業の削減(税金を安く、企業の負担を減らす)
例:自由貿易の推進(関税撤廃、国内産業の淘汰(農業なども))
例:平均年収の低下(30年前 455万円→418万円)
例:消費者物価指数(30年前 96.0→108.5(2020年を100とした時)
例:世帯平均所得 (30年前 644.2万円→524.2万円(1994→2022)
例:国民負担率 (30年前 36.3%→46.1%(1993→2023)
例:上京学生へ仕送(30年前 12.49万円→8.85万円(1994→2024)
例:若男性非正規率(30年前 3.2%→14.6%(1990→2019年)
例:切り花 出荷量(30年前 57.86億本→30.28億本(1996→2023年)
グローバル化が目指しているもの
・グローバルな投資家、企業に有利な政策ばかり
・各国の民主主義が機能不全
・政策がグローバル企業のため普通の人々の生活の向上が抑え込まれる
例:日本型経営(従業員を大切にした経営)、日本型市場経営の衰退
例:少子化、国力の低下
下村 治 大蔵官僚、エコノミスト(1910-1989年)
懸念:経済政策の変更 国民経済、経世済民の観点から多国籍企業を優遇する観点に変化している(米国での現象)
国民経済の観点 下村さんの本「日本は悪くない 悪いのはアメリカだ」文春文庫2009年
「では、本当の意味での国民経済とは何であろうか。それは日本でいうと、日本列島で生活している一憶2千万人が、どうやって食べてどうやっていきていくのかという問題である」
「この一億二千万人は日本列島で生活sるつという運命から逃れることはできない。そういう前提で生きている。中には外国に脱出するものがあっても、それは例外的である。全員がこの四つの島で生涯を過ごす運命にある。」
「その一億二千万人が、どうやって雇用を確保し、所得水準を上げ、生活の安定を享受するか、これが国民経済である」
下村は、アメリカの経済政策の背景には「国民経済の思想」と矛盾する「多国籍企業の思想」(グローバル企業の思想)が存在すると指摘し、この奇妙さを批判
「多国籍企業というのは国民経済の利点についてはまったく考えない。ところがアメリカの経済思想には多国籍企業の思想が強く反映しているため、どうしても国民経済を無視しがちになってしまう」
初期の作成:相川清氏
日本の大企業(資本金10億円以上)の変質
1997年(構造改革以前)と2023年を比較
経常利益 4.23倍
売上高 1.09倍
従業員給与 1.04倍
設備投資 0.86倍
株主への配当金 8.43倍